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5:困惑

 

秋羅から嘘のような真実を教えられた日の夜、由衣は色々考え込んでいた。

空には雲ひとつなくて月や星たちがキラキラ輝いているのに

由衣の心の中はぐるぐると不安の渦がうねっていた。

 

本当に秋羅と一緒に行ってもいいのか・・・・。

 

由衣が今の生活に飽き飽きしていたのは事実だった。

朝起きて学校へ行って、部活のある日は部活をやって、あとは帰って寝るだけ。

休みの日だってたいてい何もせずに家でぐったりしている。

たまに友達と遊びにいくこともあるが、本当にたまにしか遊びに行かない。

こんな生活送っていても何の意味があるのだろうと何回思ったことか。

 

何を迷う必要があるのか。

 

いや、迷う要素はあるのだ。それは家族の存在。

由衣には父親と母親と今年小学校にあがったばかりの妹がいた。

由衣は家族が大好きだった。

ちょっと無口だけど、何事もいつも優しく見守ってくれる父。

料理がうまくていつもニコニコ笑っている母。

世話をかけてばかりいるけれど素直でかわいい妹。

家族と過ごす時間が特別楽しかったわけではないけれど、大切な存在だった。

その大切な家族と離れるのはやはりさみしい。

考えていると頭がくらくらしてきて息苦しい。由衣は起き上がって窓を開けた。

窓を開けると夜風がひんやり冷たくて心地よい。

頭の熱がだんだん冷めてくると、ふっとある思考が頭をよぎった。

 

後悔しないかな?

 

家族は大好きだけれど、今の生活にうんざりしているのもまた事実。

今のままのつまらない生活を続けたらきっと後悔するに決まっている。

 

行きたい・・・・。

 

何よりも心がそう望んでいる事を由衣自身がよくわかっていた。

秋羅とともに彼の世界へ行くことをひそかに由衣は決心した。

寒くなってきたので、窓を閉めて布団に包まった。

布団の中は暗い闇に包まれていてなんだか無性に寂しくなる。

「お父さん。お母さん。桜。ごめんね。」

由衣は布団の中で小さくつぶやくと、ゆっくり目を閉じた。

夜は静かにふけていく。

 

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