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23:嵐が去って

 

「うっ・・・・うん・・・・・。ん?」

「あ、大樹が起きた。」

リクが去ってから三十分。祈祷が始まる前に六人がいた客間で、大樹と萌花が目を覚ますのを

待っていたが、ようやく大樹が目を覚ました。萌花はまだ眠ったままだ。

 

「え????ここは?」

大樹はかなり困惑している様子。

「大樹。俺のことわかるか?」

六人の中でも特に彼を心配していた健一朗が声をかける。健一朗と大樹は、あちら

の世界からこちらの世界に来た仲間のなかでも特に仲が良かった。

「あ、ちろだ!おはよう。」

”ちろ”とは健一朗のこと。大樹は人に変なあだ名をつけるのが得意なのである。

健一朗はそれを聞いて、ホッとし、「おはよう。」と返す。

「それに、みぃちゃんとあっくんにとっこ。お!?横にももちゃんが寝てる・・・。あと、

知らない女の子が二人・・・・。」

ちなみにみぃちゃんが美月、あっくんが秋羅、とっこが瞳、ももちゃんが萌花だ。

 

「あ、はじめまして。由衣です。」

大樹の視線を感じて、由衣が思わず自己紹介をする。

「わたしは、杏って言います。よろしくお願いします。」

杏も名前を言うと、ぺこりとお辞儀をした。

「僕は大樹です。よろしくね。ゆいりん、あんち。」

例によって大樹は、由衣と杏にも変なあだ名をつけ、にっこり笑う。

二人はそのあだ名を聞くと、お互いに顔を見合わせて苦笑いをしたが、

それを拒否することはしなかった。

 

「大樹。この状況でよくそんなに能天気でいられるわね・・・。さすがの私でもあきれるわ。」

ここまで黙って聞いていた瞳が頭を抱えて言葉を投げかける。瞳以外にも秋羅と美月も

同じようなことを思っていた。

「それが俺です!何か問題でも?」

しかし大樹は、悪びれる様子もなく、まじめな顔をして得意げにピースサインを出す。

そのような大樹の様子に、ただでさえ短い、瞳の堪忍袋の緒が切れる。

「問題あるに決まってるでしょ!いいからどこからどこまで覚えているのか言いなさいよ!!」

「ちぇっ、相変わらずとっこはうるさいな。今思い出すよ。」

瞳に怒られて、ようやく大樹は渋い顔をしてまじめに話し始める。

「えっと・・・本拠地が襲われて、意識がなくなって・・・・それでここ・・・・にいるんだ。」

「それだけ!!?」

あまりの情報の少なさに、思わず瞳がツッコミを入れる。

「うん。ボケとかじゃなくて本当にそれだけ。」

 

どうやら大樹は、本拠地で襲われてからから、ここに来るまでの記憶がすべてないらしい。

もちろん今寝ている萌花もそのような状況なのだろう。

「そうか。それなら奴らに関して何かおぼえてるというわけではなさそうだな。」

秋羅が落胆の声を漏らす。リクは自らを”陸神”と名乗っていたが、本当に彼女が神という

存在なのか、そして、彼らはどのように動いているのか、とにかく何でもいいから情報が欲しかったのだ。

 

「うん。そうみたい。ごめんね。それにしても、僕がここに来るまでに一体何があったの?」

大樹はようやく事の重大さを察知したようだ。

「お前らは、本拠地が襲われた時に敵に連れ去られて、きっと操られたんだ。それで今まで

俺らと戦っていたが、敵が何やら錯乱してどこかに行ってしまい、お前らを置いていったというわけだ。」

秋羅が推測を交えつつ、これまでの状況を説明する。

「そうか、操られて戦ってたのか。どうりでこんなに疲れてるわけだ。」

いくら操られていたからとはいえ、力の源となっているのはあくまで、大樹本人の体だ。

あれだけ戦って疲れていないはずがない。

 

 

 

「う・・・あ・・・・つかさくん!!!!!!」

突然大声があがり、一同びくり!と肩を震わせる。

「あれ?つかさくんは?」

声の主は、今まで眠っていた萌花だ。

「萌花、気がついたみたいだね。」

「あ、美月くん!ここはどこ?」

 

萌花はきょろきょろと辺りを見回す。やはり大樹と同じように困惑しているみたいだ。

「ここは陸の神殿だよ。萌花は本拠地でさらわれた後、陸神に操られて今まで戦っていたんだ。」

今までの状況を優しく説明する海月。

「あ・・・そうなんだ。私さらわれたんだ。」

萌花は本拠地が襲われたときの記憶が少しあるみたいで、しばしうつむいて、

何やら記憶の整理のようなものをしている。

 

「萌花!さらわれた後のことで、何か覚えていることはないか?」

大樹よりは少し記憶の残っていそうな萌花を見て、秋羅は思わず、

何かしらの情報を得られないかと、彼女の華奢な肩をつかんで詰め寄る。

「秋羅くん痛いよ!」

「あ・・・すまん。ついつい焦って・・・。」

秋羅が萌花の肩から手を離してから少しすると、

萌花は「はっ!」と、何か思い出したような顔をした。

「やっぱり何か覚えてるのか!!」

秋羅はまた、今度は先ほどより控えめに、萌花に詰め寄る。

 

「うん。覚えてる。つかさくんが・・・。」

「つかさが??」

萌花の言葉が止まる。秋羅はじーっと次の言葉を待っていたが、

次の言葉が出ることはなく、代わりに大粒の涙が、萌花の目から零れ落ちた。

「うっ・・・うっ・・・・。」

「どうした???萌花???」

突然の涙にあたふたしている秋羅の代わりに、美月が萌花の側によって、

萌花の頭をゆっくりと優しく撫でて、なぐさめる。

 

 

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