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18:陸神

 

陸の神殿の内部は、無数に灯る炎のせいで、淡いオレンジ色に包まれており、

また、壁の所々からは、何かの植物の蔓が、下へだらんとしな垂れていた。

 

「中はこんな風になってたのね。外からじゃ想像もつかないほど綺麗な作りね。」

由衣が、神殿内部のあまりの綺麗さに、感嘆の声を漏らす。

「陸の神殿では、『火』、『植』、『色』という三属性を祭っているので、属性との調和を考えて、

こうして、所々に火を灯し、植物を這わせ、神殿内を暖かな色で包んでいるのです。」

由衣が感嘆しているのを見て、零亜が少し自慢げに説明を加える。

 

「『火』の属性ってことは、由衣の能力が高められるな。」

秋羅が零亜の説明を聞いて、言葉を漏らす。

「そうみたいね。能力が高まるってどんな感じなのかしら・・・。」

それを聞いて、由衣は少し緊張の色を見せる。今回能力が高まるという体験をするのは、

由衣ただ一人であるからだ。

また、誰も体験したことがないことを、自分が一番に体験するということも、

緊張感を高める要因となっていた。

「まあ、今からそんなに緊張するなって。その時が来れば、嫌でも緊張するんだからな。」

「うん・・・。そうね。」

緊張して色々な考えをめぐらせている由衣に、秋羅が言葉をかけるが、

由衣は、なかなかすぐには緊張が解けない様子だった。

 

長い廊下を直進した一行は、大きな祭壇のある広間までたどり着いた。

大きな祭壇には、色とりどりのガラス球がちりばめられており、

その両側には、大きな炎が赤々と燃え上がっている。

どうやら、ここに陸神が祭られているようだった。

 

「ここが祈祷の間です。ここに、陸神が祭られているので、ここで祈祷を行います。

ですが、祈祷の時間は決まっていまして、次の祈祷は今から一時間後になってしまいます。」

祈祷の間に着くと、零亜が話を始めた。

「それじゃあ、すぐに祈りをささげるのは無理なのね。」

『今から一時間後』と言うのを聞いて、瞳が少し残念そうに呟く。

「はい。ですので、もしよろしければ客間をご用意していますので、そちらでお待ちください。」

「客間はこちらです。」

零亜に続いて、亜理亜が祭壇の右のほうにある、木で作られた扉を手で指しながら案内をする。

それならそうさせてもらおうと、亜理亜の後ろに六人がついていこうとしたその時、

 

ガチャ

 

祭壇の奥にある扉が開き、一人の女性が姿を現した。

「司祭様!!」

亜理亜が『司祭様』と呼んだその女性は、

ウェーブのかかった長い髪の毛を、てっぺんでまとめていて、

袖や足元が見えないほどの、真っ白ドレスをまとっている、とても上品な身なりだった。

「あら、お客様ですか?いらっしゃい。ゆっくりしていってくださいね。」

「司祭様!いけません!こちらは祈祷者の方たちですよ。司祭と祈祷者が

初めて出会う場は、祈祷の場でなければならないと、何度言ったらわかるのですか!!」

そう言いながら亜理亜は、大慌てで司祭に駆け寄り、司祭を部屋に押し戻そうとする。

「いいじゃないの。そのような規則は所詮昔の古い・・・」

 

バタン

 

亜理亜に押し戻されつつ、司祭は何か言っていたようだったが、

亜理亜が途中で司祭を部屋に押し込み、扉を閉めてしまったため、その言葉は途中で途切れてしまった。

「申し訳ありません。お見苦しいところを見せましたね。とりあえず客間へ行きましょうか。」

そのやりとりを呆然と立ち尽くして見ていた六人に、零亜が声をかけ、亜理亜の代わりに客間へと案内をする。

 

客間には数秒も歩かないうちに着いた。

客間の真ん中には、淵に植物の蔓模様の彫刻が施された、木製の大きな机があり、

その周りを、赤い布が特徴的な、二、三人がけのソファーが囲んでいた。

また、壁には、祈祷の間へと続く廊下でも見た、炎と植物の蔓が飾られている。

 

「さっきの女の人、司祭様っていったっけ、どんな人なんですか??」

客間に入って席に着くや否や、瞳が零亜に疑問をする。

「司祭様はですね・・・とても気さくな方です。こんなこというと、亜理亜さんが

『司祭とは、厳格で聡明なイメージを与えなければならないんだ』って怒るんですけどね。」

零亜は、なんだかうれしそうな笑顔を浮かべて司祭のことを話す。

「たしかに規則にとらわれていそうな感じではなかったわね。」

「あ、そういえば、さっきの『祈祷者と司祭が初めて出会う場が祈祷の場でなくてはならない』っていう規則は、

破っちゃったみたいなんですけどいいんですか?」

瞳の発言を聞いて、思い出したように、今度は健一朗が質問をする。

「ああ、それでしたら、たぶん気にすることはないと思います。

亜理亜さんはああ言っていたけれど、司祭様はあの規則をあまり重要視していないみたいで・・・」

「ずいぶんいい加減な司祭だな。」

「こら!秋羅失礼だぞ!」

話の途中で、秋羅の口から無意識的に出た言葉を美月がたしなめる。

たしなめられた秋羅は「すまんすまん。」という感じで肩をすくめた。

「あ、でも、司祭様は、重要視しなくてはならない規則はしっかり守っている方なので、ご安心ください。

あと、先ほどの規則を破ったことで、祈祷が成就しないとか、効果が薄れることはないので、

それも、ご安心ください。」

 

「零亜!!祈祷の準備をするから手伝ってちょうだい!!」

話が終わると、祈祷の間のほうから亜理亜の声がした。

「はぁーい!今参ります!!

皆さん、それでは祈祷の時間になるまでごゆっくりおくつろぎください。」

零亜は、少しあわてた様子でぺこっとお辞儀をすると、足早に客間から去っていく。

 

「なんだか守り人って大変そうね。」

瞳が、零亜が去って行った方向を見ながら言葉を発する。

「そうだね。すごくどたばたしてるし。」

瞳の隣に座っている健一朗も、零亜の去っていった方向を見て、賛成の意を唱えた。

「とりあえず、祈祷の時間になるまでゆっくり休みましょう。特に瞳ちゃんと私なんて

ずっと戦っててへとへとなんだから。」

そう言うと、由衣はソファーにごろんと横になり、寝る体制になった。

「そうだな、じゃあ各自、時間まで適当にくつろごうか。」

秋羅もそう言うと、ソファーの縁に座って本を読み始めた。

 

他の四人も各々好き勝手にくつろぎ始める

杏は秋羅から本を借りて読書を始め、

瞳と健一朗は何か話している。

そして美月は、今後の行動を考え、紙にまとめていた。

 

時間は刻々と過ぎていく。

 

 

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