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15:レンの森

 

陸の神殿へと出発する日の朝、秋羅は、由衣、杏、瞳、健一朗の四人に向かって、なにやら話を始めた。

 

「まず、これからの戦いに備えて、傷を負ったときや、体力を消耗してしまったときの対処について説明する。」                       

そう言うと秋羅は、手に持っていた袋から、なにか草のようなものを取り出した。

「傷を負ったときや、体力を消耗しすぎて動きづらくなったときは、これらの草で回復をするんだ。

うえに青い実がついているのが体力を回復するもので、赤い実がついているのが傷を治すもの。

両方とも、口に入れれば効果を発揮する。」

そう言いながら秋羅は、それらの二種類の草を一人三個ずつみんなに配る。

 

草をすべてを配り終わると、今度はまた袋から何かを取り出した。

それは、直径にセンチメートルほどの、白い飴玉のようなものだった。

「それから、これは精神力を回復する薬だ。これも口に入れれば、効果を発揮する。」

そう言いながらまた秋羅は、それもを一人三個ずつ配る。

 

「精神力って?」

瞳が”お決まり”の質問を投げかける。

秋羅は、それを予測していたかのように、その質問にすらすら答えていく。

 

「精神力とっていうのは、属性や形をイメージする時に要する精神的な負担のことだ。

まあ、簡単に言えば石の力を使うときに消耗するエネルギーみたいなものだ。」

「ふ〜ん。なるほどねぇ。」

 

少しの間沈黙が続く。

どうやら、秋羅は次の瞳の質問に身構えているようだった。

そもそも、先ほど瞳の質問にすらすら答えられたのも、瞳の質問が来るだろうと身構えていたためだったようだ。

しかし、瞳のほうは一向に質問もせず、むしろ、秋羅が次の話をはじめるのを待っているようだった。

次の質問がないことを悟った秋羅は、身構えて損したような、でも、たくさん質問がなくてほっとしたような、

なんだか複雑な気持ちを抱えつつ、次の話へと移る。

 

「で、村を北に出ると、レンの森という森がある。そこを通って陸の神殿まで向かうんだ。

レンの森には、凶暴な動物がたくさんいるから、気をつけろよ。そいつらに出会ったら、石の力を迷わず使え。

この間、相当鍛錬を積んで、精神力も体力も相当上がっているはずだから、

ちょっと力を使ったくらいでバテてしまうようなことは、まずないだろうからな。

まあ、いざとなったら、俺と美月がフォローするから、大丈夫だろうし。」

 

秋羅の話に対して、四人とも無言で、わかったというように首を縦に振る。

今まで石の力を使うための鍛錬を行ってはきたが、意識して実戦で使ったことはないので、

今の話を聞いて、皆、緊張している様子だ。

 

「それじゃあ、行くか。」

いよいよ秋羅の注意も終わり、レンの森へと入っていく六人。

 

レンの森は、どちらかというと広葉樹の類の木が多く生育している森で、

今日は天気がいいため、木の葉と葉の間から漏れる日の光がとても幻想的かつ心地よい感じで、

誰の目にも、凶暴な動物などいるようには見えなかった。

リスや鹿なんかが、木や葉の間から顔を見せそうな、とても穏やかで平和な雰囲気の森だ。

 

「なんだかすごく綺麗なところですね。」

杏が、その美しさにうっとりして言葉を漏らす。

「僕たちの世界では、このような綺麗なところってあまりないもんね。」

花や動物が大好きな健一朗も頷く。

「ここは、もともとは安全で、よく人が森林浴をしたり、いろいろな作物を採りに来たりしていたからね。」

「もともと??」

海月の話に対して、健一朗が疑問を投げかける。

「今はね、結構危険なところなんだよ。」

海月はその疑問に対して、真剣な顔つきで答える。

「前は穏やかだった動植物たちが凶暴化してしまったんだ。おかげで今ではここに近づく人は珍しいんだ。」

「そんな・・・昔は動物も植物も、人に害を与えることはなかったなんて・・・。」

健一朗の顔が曇る。

「動植物が凶暴化してしまった原因ってなんなんですか?」

杏も、ちょっと沈んだような感じで質問をする。

「残念ながらそれもわかっていないんだ・・・。」

「そうなんですか・・・。」

 

この美しい自然の中で、人間も、動物も、植物も、互いに危害など加えることなく、

伸び伸びと、穏やかに、活気に満ちて生活していたという昔を想像すると、

杏と健一朗は、なんだか胸が痛かった。

 

 

 

がさがさがさ・・・・・・

 

ふいに、健一朗の近くの茂みが揺れた。

それにいち早く気付いたのは、もちろん健一朗だった。他に気付いているものはいない。

健一朗がこのことを、近くにいた美月に知らせようとしたその時だった。

 

ガザザザ!!

 

さっきよりも大きな音がして、茂みから何かが飛び出してきた。

皆の目が、その、飛び出してきたものに集中する。

 

皆の目線の先には、くい?っと小首をかしげる小さな生き物がいた。

飛び出してきたのは一匹の白いウサギのような生き物だったのだ。

ほっと、胸をなでおろす由衣、杏、瞳、健一朗とは裏腹に、秋羅と美月は、ものすごい剣幕で、意外な言葉を叫んだ。

 

「その生き物から離れろ!!!」

 

 

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