14:神に祈りを
技の鍛錬を始めてから二週間。
四人とも、なんとか、火の玉を打ち出したり、自由に宙に浮き、移動できるようになったりと、
基本術はマスターしたようだった。
そんな折、秋羅がある提案をした。
「この近くに陸の神殿があるんだが、いってみないか?」
「はい!はーい!陸の神殿ってなんですか??」
疑問や意見があれば、いつもここぞとばかりに発言する瞳が、いつものごとく質問する。
「そもそも、この世界は四つの地区に分かれていて、その四つの地区にはそれぞれ神殿があるんだ。
それぞれの神殿には、神が祭られていて、祈りをささげれば、神の加護を得ることができる。
神の加護を得られれば、ある特定の属性に関する力が向上するといわれているんだ。」
「へー。そうなんだぁ。」
秋羅の返答に対して、瞳は興味津々の様子で、さらに質問を続ける。
「四つの地区って言うのは何?どんな地区があるの??」
瞳の更なる質問に対して、「説明するのが面倒くさい・・・。」という感じで、顔をしかめる秋羅。
それを見兼ねて、美月がその質問に答える。
「ラウン地区・ルーブ地区・グリングリン地区・プルーパ地区という名前の四つの地区があります。
ラウン地区は今僕たちがいるところで、おもに農業・漁業などが盛んです。首都はこのラウン村で・・・」
「ちょっと待った!!」
瞳がびっくりした様子で、話に割り込む。
「ラウン村が首都って!!この明らかに田舎!って村が??」
ラウン村は小さくはないものの決して、大都市というような大きな都市ではなく、
ごく普通の中くらいの村といった感じであった。
周りには、森、畑、田んぼなどが数多く存在し、道も完全に整備されてはおらず、
とても、首都という感じではなかった。
「この地区は、さっきも言ったとおり、農業や漁業などが盛んで、この土地で作られたり、とられた食物が、
ラウン地区はもちろん、ほかの三地区の食料の源になっていると断言してもいいくらいなんです。
だから、地区のほとんどが、森や山や畑や海といった地帯で、いかにも大都市っていうのが首都ではないんです。」
「なるほどねぇ・・・わかったわ。」
「じゃあ、話を先に進めます。
次はルーブ地区。ルーブ地区はおもに交易が盛んです。首都はルーブ市で、
ラウン地区で作られたり、とられた作物のほとんどが、ここで取引されています。
また、食品を加工したり、その他の生活必需品などを作る施設もあり、とても活気にあふれた地区です。
この地区には、海の神殿があります。
続いて、グリングリン地区。ここは、自然がほぼ手付かずになっている、いわば保護区域ですね。
四地区中最大の広さの地区で、さまざまな種類の動植物が存在しています。
人間は、地区を管理している人と、特別に許可を得た人しか入れないようになっているんです。
この地区にあるのは、空の神殿です。
最後は、プルーパ地区。ここは機械の技術がものすごく発達していて、ほとんど自然がなくなりつつある地区です。
常に機械の研究が行われていて、、ほとんどのものが機械化され、便利になっています。
首都はプルーパ市で、真夜中でも昼のような明るさ、温度なども機械で管理されている、まさに機械都市です。
この地区にある神殿は、星の神殿。
以上が、四つの地区の説明です。他に何か質問はありますか?」
瞳は納得といった感じで、首を横に振る。
「特定の属性っていうのは、どんな属性なの?」
今度質問したのは、由衣だ。
「実は、その属性というのがどの属性かは、はっきりとわかっていないんだ。
祭られている神に近い属性なんだがな・・・。」
回答者が秋羅に戻る。
「つまり、私たちの中の誰かの属性もあるかもってことよね。」
「そういうことになるな。まあ、とにかく行ってみないとわからない。行ってみないか?」
「はい!私行ってみたいでーす!」
さっきから興味津々の瞳が、真っ先に賛成の意を唱える。
由衣、杏、健一朗の三人も首を縦に振る。
美月も、もちろんという感じでうなづき、
全員一致で、明日の朝、陸の神殿へ向けて出発することが決定した。