13:鍛錬あるのみ!

 

一行がラウン村に着いてから、二日たった。

由衣、杏、健一朗、瞳の四人はやっと普通に動けるように回復し、

力を使うための訓練を始めていた。

 

場所は、ラウン村から少し離れた森の中。

 

「まず、力をうまく使うポイントを教える。」

秋羅が先生みたいにちょっと偉そうに話し始める。

「一つ目は、自分の属性をよく理解し、イメージすることだ。

例えば、俺だったら光が属性だから、光をイメージする。

そして、球状にしてとばしたり、光線にして打ったりする場面をイメージするんだ。」

 

実際に秋羅は話しながら掌の上で球状の光を作ってみたり、

手を鉄砲の形にして、人差し指に光を集めたりして見せた。

四人は無言で首を縦に振ってみたり、感心したりしてそれを見ていた。

 

「じゃあ、とりあえずやってみて。」

「え!?ちょっと待ってよ!」

話は終わったという顔をしている秋羅に対して、突っ込みを入れる瞳。

「まだポイントの一つ目しか聞いてないじゃん!ポイント、他にもあるんでしょ。それ教えてよ。」

秋羅は少しの間沈黙して、考える。そして、

「確かにまだ他にもポイントはあるけど、まあ、やりながらってことで。

そのほうが何かと説明しやすいからさ。」

と言って、「でも・・・。」と食い下がる瞳を制した。

 

とりあえず四人は、第一のポイントを踏まえて実践してみる。

由衣は「火」、杏は「守」、健一朗は「重」、瞳は「雷」という属性をそれぞれ保持していることは、

前もって秋羅や美月から各々聞いていたため、それぞれの属性をイメージして形にしてみる。

由衣は「火」、瞳は「雷」という、割とイメージしやすい属性からか、

その二人の掌には、小さな火の塊と、雷の塊がそれぞれ形作られていた。

一方他の二人は、杏が「守」、健一朗が「重」と、イメージしにくい属性のため、

なかなか形にするという作業が進まずにいた。

 

「杏さんと健一朗くんは、属性そのものをイメージというと

なんか難しいから、物や状態をイメージしてみるといいよ。

例えば、杏さんの場合、盾とか自分たちを覆うものとか。

健一朗くんは、重力がすごくかかっている状態や、その反対でかかってない状態とか。」

てこずっている二人を見兼ねて、美月がアドバイスをする。

そのアドバイスを聞いて、二人とも「なるほど。」と理解すると、

杏の掌には薄い板みたいなものができはじめ、

健一朗の足が地面から少しずつ離れ始めた。

 

と、次の瞬間。

 

ボワン!!

パチパチ!!

 

「きゃっ!!」

 

杏と健一朗よりも先に属性が形になってきていた由衣と瞳の力が、

ある程度使えそうな大きさになったところで突然発動し、無くなってしまった。

 

「はぁ!?」

「ここまで大きくしたのに!!」

二人とも悔しそうな表情で秋羅の方を見る。

一方秋羅のほうは、その様子を見てくすくすと小笑いをもらす。

「あ!秋羅!!今あんた笑ったわね?」

「なんか悪いところがあったんなら教えてよ!」

二人とも秋羅に対してご立腹の様子だ。

「わりぃわりぃ。そう、ここでポイントの二つ目だ!

力を形にしたら、今度はそれをとどめて、コントロールしなくちゃならない。」

 

ここまで秋羅が話したところで、杏の掌にできていた板がパキンと割れ、

健一朗の足元がふらつき足が地面についてしまった。

二人とも、顔や声には出さないが、悔しそうな様子だ。

 

「まず、掌や足など、力をためたところに神経や筋力を集中して力をためる。

それから、発動したい方向や場所に向って押し出すような形で発動するんだ。

まあ、最初は難しいから、今みたいに勝手に発動したり、効果が切れたり壊れたりするだろうけど。」

 

「よし、もう一回やってみよう。」と、

四人はそれぞれ、もう一度力を形にし始める。

何回も、失敗したり、

時に、成功しかけたりと鍛錬を続けていく四人。

 

そのような日が何日も何日も続いた。

 

 

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