12:休息
「具合はどうだ?四人とも。」
秋羅はベットに横たわる四人に向って言った。
「良くない。」
「まだ動けそうにないです。」
「筋肉が悲鳴をあげてるわ。」
「・・・もう少し休みたいな。」
ソラとリクと戦闘になった場所から目と鼻の先である、ラウン村に着いてから、丸一日が経とうとしていた。
由衣、杏、瞳、健一朗の四人は、ラウン村の宿に担ぎ込まれ、休息をとっている。
「まあ、当然だろうな。はじめて力を使ったんだから、相当疲れてるはずだ。」
四人とも戦闘中に慣れない力を使ったため、精神、肉体共に疲労がひどく、
丸一日たった今でも、とても動けるような状態ではなかった。
「しかし、よくお前ら石の力を引き出せたよな。」
秋羅が不思議そうな顔で話し始める。
「そうだよね。僕たちが始めて力を使ったときなんか、
いくら頑張ったって、あんなにすごい力の使い方はできなかったよ。」
美月も、なんでだろうね?というような感じで話に加わる。
二人の疑問に対して、由衣が話を始めた。
「私は、秋羅と美月さんが一生懸命戦っているのに、何もできない自分がすごく
不甲斐なくて、悔しくて・・・。そうしたら、自然と体が動いたの。そこからは、私が私じゃないみたいだった。」
「私が私じゃないみたい???」
秋羅がわけがわからない様子で復唱する。
「そう。私が私じゃないみたいっていうのは、意識して体を動かしたり、石の力を使ったわけじゃないってこと。
私は、たしかに力を使いたい!って意志はあったけど、実際は、私のことを、私じゃない誰かが操っていたみたいだった。」
「私もそんな感じでした・・・。」
「私も・・・。」
「僕もそうだった。」
由衣が言ったことに、杏と瞳と健一朗も同意を示した。
「そうか・・・。不思議なこともあったもんだな。」
由衣たちの話を聞いて、秋羅も美月もいろいろと想像をめぐらせていたようだった。
やがて、秋羅と美月は買い物に行くといって宿から出掛けていってしまった。
秋羅と美月が去った後、瞳がしみじみと口を開く。
「しっかし、力って使うとこんなに疲れるのね。そう考えると、秋羅さんと美月さんは相当力を使い慣れてるわね。」
「そうね・・・。私も早くあれくらい使えるようになりたいなぁ。」
「そうだね。少し使ったくらいでこの様だもんね。」
「私たちがお役に立てる日は来るんですかね・・・。」
瞳の発言を皮きりに、いろいろと言葉をこぼす四人・・・。
先日の戦いが終わってから、四人とも各々を不甲斐なく感じていたのだ。
こちらの世界に来てから、気を引き締めていたつもりが、心のどこかでは、割となんでも
簡単にいくと思ってしまっていた。しかし、実際はそうではないということを、肌で感じたのだ。
敵が出てきたら、戦えない。戦ったとしても、まだ未熟で、すぐに疲労してしまう。
”一つの世界を救う”ということが、どれだけ大変で、どれだけ重い事実なのかということを再認識した。
しばらく沈黙が続いた後、弱気な自分たちに喝を入れるように、瞳が言った。
「ま、落ち込んでても仕方ないよ!まだここに来たばかりなんだし。これからこれから!」
そう・・・これからなんだ・・・。まだ、始まったばかりなんだ・・・。
瞳の言葉を各々胸に刻んで、
ただ今はゆっくり休もう、そして、これから必死で努力しよう、と心に誓う四人だった。